商標用語集

商標用語集

商標(trademark) 商標とは文字、図形、記号もしくは立体的形状若しくはこれらの結合またはこれらと色彩との結合(すなわち標章)であってその商品や役務(サービス) について業として使用されるものを言う[商標法第2条]。したがって、音声、におい、味(sensory mark)や動くマークは出所表示できるものであっても現行法上商標とならない。商標と言う言葉は、従来からの商品に付与されるものに限らず、サービスについて使用するサービスマークを含んでいる。
登録商標 (registered trademark) 登録商標とは特許庁にて商標登録原簿に登録された商標を言う。登録には商標権の設定の登録が必要であり、商標権の設定手続きとしては登録査定から30日以内に登録料の納付が必要である[商標法第19条]。設定登録された商標は商標公報に掲載され、異議申立ての対象となる。
指定商品 (designated goods) 指定商品とは商標登録出願をする際に指定する一又は二以上の商品を言う[商標法第6条]。その商品の指定は商品区分に従って記載しなければならない。実務上、明瞭な記載が求められており、”第○類 すべての商品”と記載することは不明確として補正の対象となる[審査基準]。
指定役務 (designated services) 指定役務とは商標登録出願をする際に指定する一又は二以上の役務を言う。役務の指定も商品区分に従って記載しなければならない。現行法では多区分出願ができるため、1つの商標登録出願に指定役務と指定商品を合わせて指定することもできる。
商品区分・役務区分 (classification of goods and services) 商品区分・役務区分とは商標登録出願をする際に記載すべき施行令(別表)で定めた類のことを意味し、現行法では国際分類に沿った第1類から第45類までが決められている。商標登録出願人が一又は二以上の区分を選ぶことになる。このうち第1類から第34類までが商品区分で、第35類から第45類までが役務区分である。役務については、別表に挙げられていない場合であっても、比較可能な他の役務から類推して分類されるものとされ、役務の提供の用に供されている物品の貸与は当該役務と同一の類に分類され、また、それでも分類できないものは第45類とされる。物のパッケージ(容器)はその中身の商品と同一の区分である。商品区分・役務区分は商品や役務についての類似の範囲を定めるものではない[商標法第6条第3項]。商品区分・役務区分は商標登録出願の料金のベースであり、多区分出願の場合には出願時、審判請求時、登録時において区分ごとの料金加算がある。
標章 (mark) 標章とは文字、図形、記号もしくは立体的形状若しくはこれらの結合またはこれらと色彩との結合である[商標法第2条]。
サービスマーク (service mark) サービスマークとは役務(サービス)について使用する商標である。役務と商品は類似関係となり得ることが明らかにされており[商標法第2条第5項]、サービスの一環で使用した物でも、その形態によっては他の商品についての商標権を侵害するものとなり得る。
商標見本 (mark drawing) 商標見本とは商標登録を受けようとする商標を表示した書面のことを言う[商標法第5条]。商標登録出願の願書に添付して出願される。実務上、同じ読み方のかな(カタカナ、ひらがな)表記と英字表記を2段にして商標見本を作成して出願することが行われており、それぞれ単に表記方法が違うだけで別出願にする必要はない。
標準文字 (standard letters) 標準文字は特許庁長官の指定する書体の文字をあらわしたものであり、標準文字を使用することで商標登録出願の願書への商標見本の添付は不要になる。標準文字とは同一のポイント、横書きの一段の文字列である。色彩のあるもの、2段書きのもの、草書体や特殊なフォントの文字や、縦書きの文字、図形や図形を含むものは標準文字による商標登録出願ができない。
立体商標 (three-dimentional trademark) 立体商標とは立体的形状または立体的形状と平面標章の結合からなる商標である。立体商標の願書にはその旨の記載が必要であり、その旨の記載がない場合は平面商標として扱われる[審査基準]。識別力を有しない立体的形状と識別力を有する文字等の結合からなる商標は立体商標として登録可能である。立体商標は1又は2以上の異なる方法から表示した図または写真により願書上特定される。
団体商標 (collective mark) 団体商標とは事業者を構成員に有する団体がその構成員に共通に使用させる商標であり、団体の構成員が扱う商品・役務についての共通的性質を示すものである。登録可能な団体商標は公益社団法人や事業協同組合等であって、法人格を有するものである[商標法第7条]。財団法人、株式会社、フランチャイズチェーン、商工会議所は団体商標の登録を受けることができない。
商号 (trade name) 商号とは商人が営業活動上自己を表示するために使用する名称である。会社の場合、商号は設立登記の必要条件であり、漢字や仮名からなる文字列とされ、図形や色彩は構成要素とならない。商号が登記されると、同一市町村内では同一や区別のつかない他人の商号登記は禁止される。商号は登記によって不正競争目的についての挙証責任の転換の利益が得られる。商号権は商号専用権と商号使用権とからなり、その点で権利内容は商標権と似ている。会社名は一般に商号であると考えられるが、同時にサービスや商品の出所表示機能を果たすことがあり、商号をそのままあるいは株式会社を除いた部分を商標登録することが多く行われている。また商号である会社名が他人の登録商標に類似する場合には、その会社名には普通の態様で使用する限り登録商標の効力が及ばない[商標法第26条第1項]。
著名商標 (famous trademark) 著名商標とは日本国内で商品・役務の分野を問わず全国的に知られている商標である。従って、非類似の商品や役務に使用した場合でも、その出所を混同するような商標であって、防護標章登録による保護も可能である。仮に商標として未登録であっても、不正競争防止法などによる保護も得られる。著名商標については特許庁の電子図書館のサイトでの検索が可能である。
周知商標 (well-known trademark) 周知商標とは著名商標よりはやや知名度の低い商標であるが、その者の業務にかかる商品又は役務を表示するものとして需要者に広く認識された商標である。仮に商標として未登録であっても、他人の登録を阻止する効力がある[商標法第4条第10項]。外国周知商標と同一または類似な商標については不正競争目的が認められれば登録されない[商標法第4条第19項]。最近の審査基準では、国内未登録の外国周知商標を先取り出願したものや、出所表示機能の希釈化や名声を毀損させる目的で出願されたものは、不正競争目的であると推定される。
慣用商標 (commonly used trademark) 慣用商標とは同種類の商品又は役務について同業者間で普通に継続して使用された結果、自他商品の識別機能失った商標である。慣用商標については商標登録を受けることができない[商標法第3条第2項]。慣用商標の例示としては、「正宗」(清酒)、「観光ホテル」(宿泊施設の提供)、「プレイガイド」(興行場の座席の手配)などが挙げられる[審査基準]。
普通名称 (generic term) 普通名称とはその商品または役務の一般的な名称として認識されているものを言う。例えば、商品「時計」に時計、役務「損害保険の引き受け]」に損保などである。普通名称については、通常の態様では登録を受けることができない[商標法第3条第1項]。原則として、普通名称にはその商品または役務の略称や俗称なども含まれる。商品または役務の一般的な名称を単にローマ字記載するものは、原則として通常の態様に該当する[審査基準]。
連合商標制度 (associated trademark system) 平成8年の改正により廃止となった制度であり、類似関係にある商標を連合商標としその分離移転を制限するものであった。現行法では、類似関係にある商標についても分離移転が可能であり、混同を防ぐための混同防止表示請求を求めることができる[商標法第24条の4]。
自他商品・自他役務の識別力 (distinctiveness) 商標が自他商品・自他役務の識別力を有することが商標の本質的な機能であり、出所表示機能(source designator)と同じ意味である。商標法第3条は自他商品・自他役務の識別力を有しない商標について例示列挙しているが、通常の態様の普通名称や慣用商標を除いて使用により自他商品・自他役務の識別力である顕著性(secondary meaning) を得ることができる旨を示唆している。
防護標章登録 (defensive mark registration) 防護標章登録とは登録商標が使用によって著名となり、非類似商品・非類似役務に使用した場合でも出所の混同が発生する場合において、登録商標についてのその非類似商品・非類似役務についての他人の使用を禁止・排除できる登録である[商標法第64条]。なお、防護標章登録を受けることのできるのは商標権者だけである。
類似 (confusing similarity) 類似とは商標法上直接には定義されてはいないが、出所を混同するおそれのある程似ていることである。同一又は類似の商標を使用した場合、同一の出所にあると出所の混同をするおそれのある商品・役務の関係を類似商品・類似役務にあると言う。なお商品区分・役務区分は商品や役務についての類似の範囲を定めるものではない[商標法第6条第3項]。審査段階では、類似した他人の商標を登録しないように扱うため、商標の類否判断に外観類似、称呼類似、観念類似という各観点での審査が行われる。最近の裁判例では、積極的に商標の調査証拠(survey evidence)を用い、類似・非類似を主張する例が多くなってきている。
類似群コード (codes for classification based on similarity) 類似群コードとは特許庁の審査における類似商品・類似役務と推定される範囲を示したものであり、類似群コードは数字2桁、英字1桁、数字2桁の5桁のコードからなる。例えば絵の具(第2類)の類似群コードは25B01であり、この25B01は第8類、第9類、第16類、第17類、第24類にわたる類似群を形成する。
電子出願 (electronic filing) 商標登録出願については平成12年1月より、意匠登録出願、国際特許出願(指定官庁分)とともにパソコン出願可能となった。この場合に、商標見本(最大イメージサイズ)はJPEGで1181x1181ドット、GIFまたはBMPで2352×2352ドットである。推奨サイズは80x80mmまたは150×150mmである。JPEGではカラー画像を提出できる。
電子図書館 (IPDL) 電子図書館(IPDL) [http://www.ipdl.inpit.go.jp/homepg.ipdl] はインターネットにおける特許庁のサイトの一つであり、商標に関しては、 商標出願・登録情報(イメージ情報) 、日本国周知・著名商標検索、日本国周知・著名商標検索,、商品・役務名リスト(商品・役務名、区分、類似群コード検索)、書換ガイドラインなどを参照できる。
マドリッドプロトコル(議定書)に基づく国際登録出願 (application for international registration based on the Madrid Protocol) マドリッドプロトコル(議定書)に基づく国際登録出願とは、自己の商標登録出願または商標登録を基礎として特許庁経由で国際事務局に提出する手続きである。国際事務局で国際登録されれば、その締約国の官庁に直接寄託されていたものと同一の保護が受けられる[マドリッドプロトコル第4条(1)(a)]。英語による単一の国際登録出願によって複数の締約国での権利取得が可能となる。国際登録に対してはいわゆるセントラルアタックが国際登録の日から5年以内に可能であり、その全部または一部が取消されると、各締約国での権利も従属してその全部または一部が自動的に取消される。平成15年10月現在、英、独、仏、伊、中国、韓国等の主要国を含む約60カ国が加盟しており、米国も平成15年11月には手続きが可能となる。今後、更に増加していくことが予想される。
移転 (transfer) 商標権は原則的に自由に移転することができる。すなわち、連合商標制度廃止に伴いその営業と分離して移転できるものとし、指定商品および指定役務の分割移転も可能である[商標法第24条の2]。なお、非営利団体については、移転の制限がある。
分割 (division) 商標法上の分割は、(a)商標登録出願の分割[商標法第10条第1項]と、(b)商標権の分割[商標法第24条第1項]の2つがあり、いずれも2以上の指定商品および指定役務を細分できるものである。なお、商標見本の2つ以上の文字列や図形を各部分に分けることはできない。
専用使用権 (exclusive license) 商標権については、商標権者は指定商品または指定役務について登録商標を使用する権利を専有し、その部分について同一範囲内で単一の専用使用権を設定できる[商標法第30条]。なお、地域、時間、商品・役務で区分してそれぞれ専用使用権を設定することは構わない。登録が権利発生要件である[準用する特許法第98条第1項第2号]。契約により独占的にライセンスする独占的通常使用権は商標法の専用使用権とはその発生過程が異なる。
通常使用権 (non-exclusive license) 商標権者は原則的にその商標権について他人に通常使用権を設定でき、通常使用権者はその設定行為で定めた範囲内において、指定商品または指定役務について登録商標を使用する権利を有する[商標法第31条]。登録は第三者対抗要件に過ぎない。また、現行法は類似商標の分割移転を認めているため、禁止権の範囲について当事者間で訴不提起契約(Covenant not to sue)を締結しても良いと思われる。
更新登録 (renewal registration) 商標権の更新登録は所要の申請書を商標権の存続期間(設定登録の日から10年)の満了前6月から満了前までの間に提出して行われる[商標法第20条]。満了後でも、同額の割増料金を払うことで、更新登録が可能である。更新登録の申請がされなかったときは、満了時に消滅したものとみなされる。
書換登録 (classification conversion registration) 旧商品区分による指定商品を新しい商品区分・役務区分の指定商品・指定役務へ転換するための作業を言う。該当するのは、平成4年3月31日までの出願にかかる商標権についてである。書換手続を怠ったものについては次の更新が認められない。
先願主義 (first to file rule) 先願主義とは時間的に前後して商標登録出願があった場合に、最先の出願人のみが商標登録出願を受けることができるとするルールである。先後願関係が問題となるのは、同一または類似の商品または役務について異なる日にわたり複数の出願があった場合である[商標法第8条]。
出願公開(unexamined trademark publication) 出願された商標は、防護標章登録を含めてすべて出願公開される。出願公開は概ね出願日から約3ヶ月前後で行われている。商標公報に掲載される事項としては、商標登録出願人の氏名または名称、住所、番号、出願日、商標、指定商品または指定役務などがある。なお、出願公開される出願は平成12年1月1日以降の商標登録出願である。
方式審査 (formality check) 方式審査とは、実体審査の前に行われる願書の記載に不備があるか否かをチェックする審査である。不備がある場合、補正指令の対象となったり、明白な場合では職権訂正が行われる。
拒絶理由通知 (notice of reasons for rejection) 実体審査の結果、登録要件が全て満たされているものではないと特許庁審査官が判断したときに発せられる通知であり、これに対して出願人は、拒絶理由を覆すために意見書、補正書の提出などを行う。
存続期間 (duration) 存続期間については、現行法では商標権の設定登録の日から10年である[商標法第19条]。存続期間は更新可能とされ、更新された商標権の存続期間も10年であって、更新の単位を10年として商標権は存続される。更新を申請できるのは商標権者のみであり、使用権者や質権者は更新登録の申請をすることができない。防護標章登録の存続期間も設定登録の日から10年である[商標法第65条の2]。
使用 (use) 商標法上の使用は権利侵害を構成する要素であるので重要である。具体的には、(1)商品又は商品の包装に標章を付する行為。 (2)商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、又は輸入する行為。 (3)役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為。 (4)役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為。 (5)役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。以下同じ。)に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為。 (6)役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為。 (7)商品又は役務に関する広告、定価表又は取引書類に標章を付して展示し、又は頒布する行為。の各行為を言う[商標法第2条第3項]。
回復 (recovery) 商標権の回復とは、一旦商標権が更新されずに消滅したものとみなされた場合であっても、正当な理由(不責事由)がある場合には、所定期間内の申請によって権利を復活させることを言う[商標法第21条第3項]。回復した権利は存続期間の満了時にさかのぼって更新されたものとみなされる。不責事由とは例えば天変地変などである。
登録異議申立 (opposition) 登録異議申立とは一般公衆による商標登録に対する異議の申立ての機会を与える制度であり、特に現行法では登録後2ヶ月以内の期間に限り何人も異議の申立てできるとした制度である[商標法第43条の2]。異議申立の審理は3名または5名の審判官が合議体で行うものとされ、登録すべきでないと判断された場合には取消決定が下される。この決定については不服申立てできない[商標法第43条の3]。
拒絶査定不服審判 (appeal against decision of rejection) 拒絶査定不服審判とは審査の結果として最終的に商標登録出願が拒絶査定を受けた場合にその査定に不服がある時に請求できる審判手続きである[商標法第44条]。請求期間は拒絶査定の送達の日から30日以内である。
無効審判 (appeal for invalidation) 商標登録の無効の審判とは商標登録が無効事由を含む場合、その商標登録を無効にするための手続きであり、審判官の合議体により審理される手続きである[商標法第46条]。商標登録の無効が確定した時、原則として初めから商標権がなかったものとみなされる。登録後に、商標法第4条第1項第1号、2号、3号、5号、7号、16号に該当することとなった時はその該当時から存在していなかったものとされる。所定の無効事由には5年の時効がある。
取消審判 (appeal for cancellation) 商標法では、(a)不使用取消審判 [商標法第50条](b)不正使用取消審判[商標法第51条、商標法第52条の2、商標法第53条](c)いわゆる不承諾登録取消審判[商標法第53条の2]の合計5つの取消審判 が定められている。不使用取消審判 は継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないときに請求することができる審判である。請求は何人でもよく、使用は社会通念上同一と認められる商標の使用を含む。不正使用取消審判は、商標権者が故意に禁止権部分の使用により、商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたとき[商標法第51条]、商標権移転の結果、不正競争の目的で分割元の業務に係る商品又は役務と混同が生ずるとき[商標法第52条の2]、使用権者の使用が商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同となったとき[商標法第53条]、それぞれ何人も請求できる。不承諾登録取消審判は商標登録出願が、外国商標にかかるものであり、正当な理由なく該外国商標に関する権利者の承諾を得ずにその代理人等により出願されたものであるとき請求できる。取消審判では取消後に権利が失効する。
社会通念上同一な商標 (trademark deemed as identical from common sense) 社会通念上同一な商標とは書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標などの態様をいう[商標法第50条]。
商標権侵害 (trademark infringement) 侵害とは他人の登録商標の権利範囲に属する商標を商標権者の同意や使用権を有せずに使用することであり、民事上の損害賠償、不当利得返還請求、差止請求、謝罪広告(信用回復措置請求)などの請求に加えて、刑事上の責任(商標権侵害罪[商標法第78条])も追及される。侵害行為には直接侵害と間接侵害[商標法第37条]があり、例えば、登録商標を表示する物を侵害する態様で使用する目的で所持する行為は間接侵害となる[商標法第37条第5項]。
差止請求権 (injunctive relief) 差止請求権とは、商標権が侵害され、または侵害されるおそれがあるときに、侵害の停止また予防のための措置をとることができるものであり、請求することができるのは商標権者又は専用使用権者である[商標法第36条]。侵害者の故意・過失を必要としないため、最も有効で直接的は救済手段となる。差止請求に付随して、侵害に供した設備の廃棄除去も請求できる。
金銭的請求権(monetary relief) 金銭的請求権とは、出願から設定登録前に商標を無断で使用する者に対して金銭の支払いを請求できる権利である。金銭的請求権の発生の要件は、a)商標登録出願されていること、b)書面にて警告済であること、c)警告後にその商標を使用したこと、d)使用によって業務上の損失があったことである。金銭的請求権の権利行使は登録後となる。この金銭的請求権は出願が取り下げ、放棄、および拒絶や無効が確定したときは始めからなかったものとされる。また、設定の登録から3年間行使しないときは消滅する。
商標登録証 (trademark registration certificate) 商標登録証とは商標権の設定登録があったとき、特許庁長官が付与する商標登録を証する書面であり[商標法第71条の2]。再交付も可能である。
商標原簿 (Trademark Register) 特許庁に備える商標原簿に登録されるのは、(a) 商標権の設定、存続期間の更新、分割、移転、変更、消滅又は処分の制限 (b) 防護標章登録に基づく権利の設定、存続期間の更新、移転又は消滅 (c) 専用使用権又は通常使用権の設定、保存、移転、変更、消滅又は処分の制限 (d) 商標権、専用使用権又は通常使用権を目的とする質権の設定、移転、変更、消滅又は処分の制限である[商標法第71条]。
商標公報 (Trademark Gazette) 公報に記載される事項は、(a) 商標権の設定の登録、商標権の存続期間を更新した旨の登録、書換登録、および防護標章登録の設定、更新、(b)商標権の消滅(存続期間の満了によるもの及び第41条の2第4項の規定によるものを除く。) (c)登録異議の申立て若しくは審判若しくは再審の請求又はこれらの取り下げ (d)登録異議の申立てについての確定した決定、審判の確定審決又は再審の確定した決定若しくは確定審決、(e) 第63条第1項の訴えについての確定判決、(f)出願公開である。
商標登録表示 (trademark registration indication) 商標登録表示は「登録商標」の文字及びその登録番号からなる。商標権者、使用権者は商標を表示する際に同時に商標登録表示をするように努めるべきである[商標法第73条]が、商標登録表示が無くとも何ら罰則はない。なお、TM, SM, Rは日本の商標法に即した商標登録表示ではないが、Rは米国連邦商標法に定める商標登録表示である。
虚偽表示(deceptive indication) 商標法第74条では、正当な登録商標の使用でないのに、あたかも正当な登録商標の使用であるかのように第三者の目を欺く行為を虚偽表示行為として禁止している。違反した者は3年以下の懲役、または罰金300万円以下である[商標法第80条]。
法人重課(severer penalty on legal entity) 商標法の3つの犯罪である侵害罪、詐欺行為罪、虚偽表示罪については、その法人に対して罰金額の上限を一億円として、自然人に対する犯罪よりも厳しく法人重課される。
不正競争防止法 (Unfair Competition Prevention Law) 不正な手段による営業上の競業を規制するための法律であり、商標法が商標の登録を中心とした競業秩序を維持するための法律であることに対し、不正競争防止法は商標の登録を伴わない競業秩序を維持するための法律である。
商標法 (Trademark Law) 商標法の目的は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することである[商標法第1条]。最近の改正としては、平成3年の一部改正でサービスマークの登録制度が導入され、平成8年の改正で立体商標、更新手続きの軽減、連合商標制度の廃止などが盛り込まれた。
ダイリューション (dilution) 商標の稀釈化ともよばれ、商標の価値を失わせる行為であって、普通名称化(genericide)や信用を毀損する行為(tarnishment)を含む。
ターニッシュメント (tarnishment) ターニッシュメントとは商標に化体した信用を毀損する行為を言う。たとえば、既存周知商標にモラルに反するような言葉や絵を加える行為である。
グレイマーケット (gray market) 真正商品の平行輸入(parallel importation)の問題に関する用語であり、その国の商標権者の承諾なく輸入された真正商品(輸入元では適法)をグレイマーケット商品 (gray-market goods)と言う。
パッシングオフ (passing off) パッシングオフとは自分で作った商品や役務を他人の名前やマークを付与しながら販売することであり、パーミングオフ(palming off)とも称される。
リバースパッシングオフ (reverse passing off) リバースパッシングオフ とは権限なく元の商標を剥がし他の異なる商標を付加した後で再販する行為をいう。
トレードドレス (trade dress) トレードドレスとは、もともとは製品のパッケージを意味したが、さらには製品自体の形状や装飾も含むように解されている。他の国の法律例では保護を受けるための要件として、顕著性を有していることと、機能そのものからくる形状ではないことが必要である。
サイバースクワッティング (cybersquatting) サイバースクワッティングとは、ドメインネームの登録時にそのドメインネームが他人の商標と混同を生ずる場合や他人の著名商標を希釈する場合であって、商品や役務にかかわりなく、その他人の商標の業務上の信用(goodwill)から悪意に不当利益を得るためのドメインネームの登録を言う。サイバーパイラシイ (cyberpiracy)とも称される。アメリカでは最近(1999年11月)、Anticybersquatting Consumer Protection Act[S.1255]が米国商標法の一部修正として立法化して、それに基づく訴訟も提起されている。

㈲ジュリスプラス