日本とWIPO[世界知的所有権機関]では、次のような特許公報、実用新案公報が発行されています。
Ⅰ.公開・公表—出願された内容を公示する文献
I-a 公開特許公報 [現行法]
I-b 公開実用新案公報 [旧法]
I-c 公表特許公報・公表実用新案公報 [現行法/PCT]
I-d 再公表特許(公報)・再公表実用新案(公報)[現行法/PCT]
I-e 国際公開 [現行法/PCT]
Ⅱ.公告・登録—権利として発生した内容を公示する文献
Ⅱ-a 特許公報 [現行法]
Ⅱ-b 実用新案公報・実用新案登録公報 [旧法]
Ⅱ-c 登録実用新案公報 [現行法]
Ⅱ-d 審判請求公告 [旧法]
Ⅰ.公開・公表
I-a. 公開特許公報
公開公報は、特許出願の出願日から1年6ヶ月で発行される未審査の特許文献です。優先権主張を伴う出願については、初めの優先日から1年6ヶ月です。厳密には1年6ヶ月(18ヶ月)といっても、18ヶ月+10日~3週間程度後の毎週木曜日に発行されます。また木曜日が休日の場合は翌日の金曜日になります。
公開公報は、特許される出願を除いて発行されますが、昭和45年の公開制度の導入後、昭和46年7月16日に発行された昭和46年1号が第1号の公開公報です。
公開前に出願内容に補正があった場合は、その補正内容も公開されますが、公開後の中間処理での補正内容は公開公報を再発行することなく公開されません。また、権利の譲渡などがあっても、公開公報を再発行することはありません。年間の発行部数は2004年は364500件でしたので、年間約36.5万件、一日あたり1000件の発行部数があります。
公開公報は出願時にどのような内容で出願されたかを公示する文献ですので、内容が自社の製品に抵触する場合でも直ぐに止める必要が生ずるものではありません。これは特許になる場合には、権利内容が出願当初の特許請求の範囲とは異なるものとなることが多いためです。ただし、抵触する場合には、継続的な出願経過情報の監視や情報提供などを行うことが賢明です。
現行法では出願から3年の期間内に審査請求がなければ取り下げとみなされます。なお平成13年10月1日よりも前の特許出願は7年の期間内に審査請求がなければ取り下げとみなされます。
公報番号表示例
[昭和46年7月16日~平成4年(1992)7月31日(平4-2103890号付近まで)]
昭XX-XXXX,平XX-XXXXの形式
[平成4年7月31日(特開平4-210388号)付近~平成11年12月24日]
特開平XX-XXXXの形式
[平成12年1月7日~現在]
特開20XX-XXXXの形式
コーヒーブレイクその1
『▲ ▼』の記号は該当する文字が電子出願できない文字の場合に、元に近い形式の文字に置き換えて使用していることを示す記号です。願書などでは余りにも難しい漢字などはこのような置き換えが行われていて直接使えないことになっております。
I-b. 公開実用新案公報[旧法]
公開実用新案公報は実用新案が無審査制度に移行する前に出願された出願内容を公示するもので、具体的には昭和45年から平成5年12月31日までに出願された実用新案登録出願を出願日から1年6ヶ月で公開する公報です。従来、公開実用新案公報は要部公開方式を採っていましたので、公報を取得しても明細書の全てが記載されている訳ではなく、書誌事項、実用新案登録請求の範囲、要約、図面だけが公開され、考案の詳細な説明は公開されませんでした。この考案の詳細な説明の部分は従来は閲覧により見ることができた事項ですが、現在は“実用全文”(U1)の形式で 昭46-000001~平04-138600(平成4年12月25日公開)が入手できます。
公報番号表示例
[昭和46年7月16日~平成4年7月29日付近]
昭XX-XXXX,平XX-XXXXの形式
[平成4年7月29日(実開平4-87357号)付近~現在]
実開平XX-XXXXの形式
[平成6年7月26日~現在]
登録実用新案3000001~XXXXXXXの形式(無審査登録)
コーヒーブレイクその2
現在は初めて出願すると、出願人には9桁の識別番号が与えられます。この番号は特許庁が今まで番号がなかった出願人に対して付与していくもので、こちらで勝手に番号をつけたり、WEBサイト上で取得するものではありません。
I-c. 公表特許公報・公表実用新案公報 [PCT]
公表公報は、特許協力条約(Patent Coooperation Treaty)に基づき出願された国際出願うち、日本を指定国とする出願の日本語の翻訳文が提出されたものを特許庁が「公表特許公報」あるいは「公表実用新案公報」として発行します。即ち、外国語でPCT出願された出願が日本に移行して来た場合に「公表特許公報」あるいは「公表実用新案公報」が発行されます。
公報番号表示例
[昭和54年7月26日~平成4年7月29日付近]
公表特許公報 昭XX-5XXXXX,平XX-5XXXXXの形式
[平成8年1月9日付近~平成11年12月]
公表特許公報 特表平XX-5XXXXXの形式
[平成12年1月~現在]
公表特許公報 特表20XX-5XXXXXの形式
コーヒーブレイクその3
特許出願や実用新案登録出願を特許庁に提出した時は、出願番号が付与されますが、この出願番号のことを特許業界では願番(がんばん)といいます。今日では、パソコン出願やインターネット出願が主流であるため、願番は提出後、受信のプルーフと共に自動的に付けられます。
I-d. 再公表特許・再公表実用新案 [PCT]
再公表は、特許協力条約(Patent Coooperation Treaty)に基づき国際公開された日本語特許出願を「再公表特許」あるいは「再公表実用新案」として特許庁が発行します。即ち、日本語でPCT出願された出願について国際公開に加えて今度は特許庁が再び公開するものです。
公報番号表示例
[昭和54年7月26日~現在]
WOXX/XXXXXX
コーヒーブレイクその4
電子出願が始まる前は、特許、実用新案登録、意匠、商標で願書の左端部に帯状の色分けをした部分を設けており、特許出願が黒、実用新案登録出願が赤、意匠登録出願が緑、商標登録出願が黄となっておりました。今と比較すると色鮮やかという記憶があります。
I-e. 国際公開公報(Published PCT International Applications)[PCT]
特許協力条約(Patent Cooperation Treaty)に基づいて国際出願されたものが、優先日から原則18ヶ月の時点で国際事務局によって公開されたものです。この国際公開の公報の情報は特許庁になく、WIPO(World Intellectual Property Organization)の電子図書館で参照可能です。
公報番号表示例
[1978 to present]
International Publication Number: WOXX/XXXXXX
[International Application Number: PCT/JP200X/0XXXXX]
Ⅱ.公告・登録
Ⅱ-a. 特許公報・公告公報
特許庁での審査の結果、特許すべきものと判断された出願を公示するための公報で、その特許請求の範囲によって権利範囲が決められるものとされています。特許査定が得られるまでに補正されることが多く、その場合に出願公開の公開公報とは内容が異なってくることが多いです。
年間約11~13万件程度の特許が誕生します。出願数との単純な比較では概ね3分の1が特許になります。
特許公報が出た後に、権利譲渡があった場合でも、その権利者の情報を更新するような特許公報が出されることはありません。このような権利の経過情報については、別途調べる必要があり、ネット上のデータ更新も原簿とは多少ずれがあるため、最終的な確認は原簿に従うことになります。
“特許公報”と”公告公報”は権利の内容としてはほぼ同じですが、特許公報は現行法の異議申立廃止後及び旧法の特許付与後の異議申立の対象となる公示方法であり、公告公報は旧法の付与前の異議申立の対象となる公示方法です。付与後異議申立制度は平成8年1月からで、異議申立制度の廃止は平成16年1月からです。
公報番号表示例
[平成5年まで]
昭XX-XXXX,平XX-XXXXの形式
[平成6年~平成8年3月29日]
特公平XX-XXXXの形式
[平成8年5月29日~現在]
特許第XXXXXXXの形式( 2,500,001番からの連続番号)
Ⅱ-b. 実用新案公報・実用新案登録公報 [旧法]
特許庁での審査の結果、実用新案登録すべきものと判断された出願を公示するための公報で、その実用新案登録請求の範囲によって権利範囲が決められるものとされています。特許の登録査定が得られるまでに補正されることが多く、その場合に出願公開の公開公報とは内容が異なってくることが多いです。
“実用新案公報”は旧法の付与前の異議申立の対象となる公示方法です。また、”実用新案登録公報”は付与後異議申立制度の公示方法であって、無審査制度導入(平成6年1月1日施行)以前に出願され、平成8年1月よりの権利付与後の異議申立制度により発行された公報です。
公報番号表示例
[平成5年まで]
昭XX-XXXX,平XX-XXXXの形式
[平成6年~平成8年3月29日]
実公平XX-XXXXの形式
[平成8年5月29日~現在]
実用新案登録第XXXXXXXの形式(2,500,001番からの連続番号)
Ⅱ-c. 登録実用新案公報[現行法]
実用新案登録が無審査(平成6年1月1日施行)となった以降の出願が登録となったものであり、概ね半年後に発行される公報である。
平成6年1月1から平成17年3月30日までに出願された実用新案権の権利存続期間は出願日から6年であり、平成17年4月1日からの実用新案登録出願の存続期間は出願日から10年である。
公報番号表示例
[平成8年5月29日~現在]
実用新案登録第XXXXXXXの形式(3,000,001番からの連続番号)
Ⅱ-d. 審判請求公告[旧法]
訂正審判を請求した場合において、訂正明細書のとおりに訂正するとの内容を公示するものであり、第三者に異議申立の機会を与えるものでしたが、明細書の補正の厳格化と共に平成6年1月より廃止されてます。
公報番号表示例
[~平成9年9月10日]
特許審判請求公告(登録実用新案審判請求公告)第XXX号の形式